学生向けの試験問題みたいなのをたまにやると面白いです。
今回はOECDのPISAというのが目に止まったのでそれを少しやってみました。
PISAとは…
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
OECDが進めているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査に、我が国も参加しており当研究所が調査の実施を担当しています。PISA調査では15歳児を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野について、3年ごとに本調査を実施しています。
15歳児1向けの調査のようです。
日本語だと読解力問題が問題例として一つ分が公開されています2
今回取り挙げるのはこちらにある問題になります。ので、上の引用元からも辿れますが、載せておきます。
2018年調査問題例 (PDF1.48MB)
モアイがモアイでモアイだという内容です3。
また、他の問題は英語とフランス語でこちらに公開されています。
難しいんだけど?
他の問題はほとんど選択式になります。基本的には資料から抜き出して答えるだけです。
ですが最後の問7は少しだけ答え方の自由度が高い質問になっていると思いました。
その問題は次の通り。
三つの資料を読んで、あなたはラバヌイ島の大木が消滅した原因は何だと思いますか。資料から根拠となる情報を挙げて、あなたの答えを説明してください。
暇な人は考えてみてください。
After reading the three sources, what do you think caused the disappearance of the large trees on Rapa Nui? Provide specific information from the sources to support your answer.
あたまのなか
ではこの問題を考えていきましょう!
資料から根拠となる情報を挙げて、ということなので、まずは資料から根拠にできるものを確認します。
とはいえ、これまでの問をやっていれば確認するまでもないのですが、
資料には、ラバヌイ島の大木が消滅した原因として、
人間は耕作やその他の理由のために木を切って土地を切り開いた
というダイヤモンド氏の説ナンヨウネズミが木の種を食べ、その結果新しい木が育たなかった
のが主な原因であるという科学者の説
が出てきます。
主要因を争っているため、どっちもだ!というのは雑すぎる意見です。
そして、どちらが優位であるかを判断できる資料は出てきていません。
したがって、資料のみから答えようとすれば「明らかではない」が答えになります。
それでは「明らかではない」を答えにして良いのでしょうか。ここで、質問にある「何だと思いますか」という問いの答えは、「〇〇である」が優先的な答え方になると考えられます。つまり、できる限り「明らかではない」という答えは避けなければなりません。
そうなると、あくまでも根拠を資料から持ってくる以上、どちらかに偏ったことを回答するのが無難なのでしょうか?
しかし、これらの資料をすべて読まされた上で意図的にどちらかの説を採用、他方を無視するのは馬鹿げています。加えて、どちらかに偏った回答をする場合、これまでの選択式の解答と同じ、抜き出しただけのような回答になってしまい、記述式になっている意味がわかりません。意味がわかりません。
どうやって回答したものか。
ここで、問題文には、「あなたは」「思いますか」「あなたの答え」とあります。これを答え方の指針に使いましょう。ほかに明確な答え方がないということは、これも要旨なのではないか、と思います。根拠を示すのは当然ながら、自分の判断基準も示す必要があるのではないかということです。これをもとに意味のある回答を考えましょう。ディベートのような感覚です。
まとめると、この問いの解釈は、「どちらかの説を採用してその根拠を資料から示し、さらにあなたの判断基準を説明してください。」となるに違いない。違いない。
はい。
というわけですが、こんなふうに回答をしようと思うととてもむずかしい。
15歳児の自分でも、このあたりの感覚は変わらないと思うので苦しんだはず。
当時なら、無回答か、頑張って答えるなら、妥協して「抜き出してどちらかに偏ったことを回答する」で済ませていると思う。
もっとハイスペックな頭をもっていれば、どの程度の答え方が求められているまで考えて、スパッと「空気を読む…ならぬ試験の文脈を読む回答」ができる/できたのかもしれません。
ちなみに、この問題の答えは次のようになっています。
次のうち,一つ以上を述べている。
1.人々はモアイ像を動かすために大きな木を切り倒しまたは利用しかつ/または耕作のために土地を切り開いた。
2.ネズミが木の種を食べたために新しい木が育たなかった。
3.実際に巨木に何が起こったかについては,更に研究を進めなければ分からない。
はい。どれでもいいってね。わかんねぇ…わかんねぇよ…。知ってたけど納得いかねえ…。
ソースには採点の具体例もあるので見てみると面白いです。
人々はモアイを移動したかったので,これは彼らの責任です。[1。木を切り倒すことを明示的に述べていないが,人々と(モアイを動かすために)木を切り倒したというひとつの理由とを述べているので許容できる答え]
こんなんも許容できるんかーい。ほんとにこんなんでいいんかいな。こんな調子の相手だったら会話できる気がしないよ…。もはや回答者の気持ちを汲み取る採点になっていないか…?
こんなふうに聞いてほしいなあ。(これはこれで別の問題がありそうだけどね!)
「資料をもとに、考えられる可能性の一つを採用して、その根拠を一つ以上挙げてください。」
そんなの関係ねぇ…
そんなこんなで解せぬですからね。あの質問への自分の満足する答えを追求しますよ。
というわけでできたのがコチラ。
うーんもう自己満足の世界ですねはい。
寸感
言葉って難しい。
実は、その後の「事実」と「意見」のどちらかを答える問題も同じくらい気になったので、興味がある方は考えてみてください。具体的には、感想文の中の事実と意見を区別させる問題ですが、感想文の著者の「意見」は良いのですが、感想文の著者が「事実だと認定している」ことを「私が事実だと認定するかどうか」と挟まずに「事実」と呼ぶことには違和感がありました(さらに言えば、本のレビューなので、「元の本の著者が事実としていること」も出てきます)。
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